「おいおい、そんなに引っ張るなよ」
レオは双子の少女にぐいぐい引っ張られながら苦笑した。キルシュとペシェという双子の少女はこう見えても社会人だといって憚らない。
「だって隊長が早く会いたいって言ってたんですよ!」
「だから早くしないと!」
子供っぽい二人の言葉に、自然とレオの頬が緩んだ。
幾つかの会議室や部署の部屋を通り過ぎると、やがて二人は一つの扉の前で足を止めてノックをした。
ガッチャという音と共に、レオの1.5倍はありそうな赤い体の巨漢がぬっと現れた。
「?!」
咄嗟にレオは双子の腕を振り払って構えた。
「おかえりなさい、キルシュさんにペシェさん」
大男は窮屈そうに腰を屈めると、二人に頭を下げる。
「ゼブルン、ただいま〜」
「ウルトラマンレオ様を連れてきたよ!」
「はい」
ゼブルンと呼ばれた大男は、レオに向かってまた深々と頭を下げた。
「ようこそいらっしゃいました。隊長がお待ちです。どうぞ」
「あ、ああ・・・・」
背筋を伸ばしたゼブルンはフリルのついたエプロンを着ていて、レオは頭が痛くなってきた。
(どんなんだよ、この中は・・・・)
部屋にはいって短い通路を抜けると、広いオフィスに出た。
「「隊長〜〜〜!!」」
二人はレオから手を放すと、一番奥の机にいる男に向かって駆けだした。
「ウルトラマンレオ様、お連れしましたよ!」
「隊長のおっしゃってた通り、この布を使ったらすぐに見つかりました!」
(あの人がアレを考えたのか・・・・)
隊長は、二人の声に顔をあげた。レオが一度だけ見たことのある、宇宙警備隊の若き隊長。
「おかえり、キルシュ、ペシェ。そうか、上手くいったか。ご苦労様」
ゾフィーは席を立って二人を軽く抱き寄せて肩を叩いた。
それから顔をあげて突っ立ているレオを見る。
「やあ、久しぶりだな。それとも、”二度めまして”というのかな? 地球では」
「久しぶりでいいですよ」
レオは仏頂面で返事をした。何を考えているのか分からない相手だ。あまり得意ではないが、相手の出方を伺うしかない。部屋の中をざっと眺めまわすと、ゾフィーの一番近くのデスクには、青いラインの体を持った女性、その手前にはここまでくる途中で見たような、普通のシルバーと赤の体のラインの女性。ゾフィーの背後に控えるような位置には、左右にそれぞれ男性が座っていて、一人は机の上に駒を並べていて、一人はプレートを起動させて、何やら没頭していた。
ふと、没頭していた一人が突然席を立った。
「ちょっと失礼」
「ああ。
レオ、そこで立っているのもなんだから、そっちの部屋へ行こう」
ゾフィーがさっき通ってきた短い通路の方を示すと、ゼブルンがサッとそこのあったドアを開ける。どうやら応接室になっているらしい。
「どうぞ」
という声と「おぶっ?!」というカエルの潰れたような悲鳴が聞こえた。
「隊長〜、連れてきたけど顔が潰れちゃったー」
吞気な女性の声が隊長室のドアの外からして、レオの前に顔面を押さえ、先程席を外した男性に支えられたアストラが姿を表した。
「アストラ?!」
「ふえ・・・・レオ兄ふぁん・・・・?」
テーマ:二次創作 - ジャンル:サブカル
うにゃ
ナフタリは嬉しそうな鳴き声をあげた。鋭い輝きを持つゴールドの瞳が、空中にいるメビウスとマックスを捉える。
「げ、ロックオン?!」
ナフタリは前足を振り上げると、二人に向かってちょいちょいと伸ばす。
「ぎゃー!」
慌ててメビウスとマックスは空中で二手に分かれた。勢い余ったナフタリが前足を着地させると、街灯がまとめて数本ひしゃげた。
それを見て、メビウスは思い切ってナフタリの前に飛んでいく。
「ナフタリ! 小さくなって! お願いだから!」
ナフタリは目の前に飛んできたメビウスを見ると、金色の瞳をくるんとまわして、尻尾を立たせた。
にゃん!
そのまま勢い良くメビウスに飛び掛る。
「わ・・・・」
「メビウス!」
間一髪のところで、横からタロウがメビウスを掻っ攫う。ナフタリの着地地点にあった噴水が壊れ、水が派手に四方に飛び散った。
「大丈夫か?!」
「タロウ教官!」
「あのネコ、なんとかしないと・・・・このままじゃ被害が・・・・」
校舎とは反対の、校門の方に向けて飛行しようと思ったが、これは拙い。下を見ると、そろそろテストの終わった生徒達が下校し始めているからだ。
あっちこっちから悲鳴と好奇心のような声があがっている。校舎の中から教員たちも出てき始めた。
「こらーーーー!! 誰だ?! 怪獣を連れてきたヤツは!!」
テーマ:二次創作 - ジャンル:サブカル
「わああーーーー!!」
「うわあああーー!!」
メビウスとマックスは悲鳴を上げながら、真っ逆さまに落ちて行く。飛ぶことも忘れて受身を取ろうとしたが、意外と柔らかな地面に衝突した。ぽふっとビロウドの絨毯が二人の体を受け止める。
「あれ? 痛くない?」
「これ、ナフタリの毛・・・・?」
先に起き上がったマックスが緑の毛に埋もれているメビウスを助け起こす。
「お〜〜〜い、大丈夫か〜〜〜?!」
遠く上にある窓の向こうから、タロウの声が聞こえる。
「大丈夫です〜〜〜〜!!」
メビウスとマックスは手を振った。と、足元の毛が動く。
「わわっ?!」
転がると空が視界に入った。それをナフタリの巨大な頭が遮る。
「な、ナフタリ?」
「つーか、でけぇ!」
中央棟の10階辺りとナフタリの屈んだ頭の位置が同じぐらいだ。そこから背中を辿って、首を巡らす姿を見ると、多分自分達はナフタリの尻尾に落ちたのだろう。
みゃー
ナフタリは一声鳴くと、大きな顔をメビウスとマックスに近づけた。
「うわ、あ・・・喰われるーーー!」
咄嗟にマックスは、メビウスの手を引いて空中に逃れた。
自分の尻尾を追いかけたナフタリは、見失った獲物を探してキョロキョロと辺りを見渡した。
ナフタリがいるのは校門正面の中庭だ。さっき外に出た拍子に、庭園の一部が破壊されていた。
「これ、ひょっとしてマズイんじゃ・・・・」
テーマ:二次創作 - ジャンル:サブカル
光の粒子がトンネルのようにアストラと女性の周囲を吹きぬけていった。
「これは・・・君は一体・・・・・」
霧が晴れるように光が拡散すると、そこはピンクの優しい光が覆う、美しい空の上だった。
女性はくすりと笑うと、音もなく地上へと降りて行く。
「あ、ちょっと待つんだ!」
慌ててアストラは女性の後を追った。
女性はふわりと優雅に街中に降り立った。はずみで胸がまた大きく揺れ、付近にいた男たちの目線を奪った。女性はまだ空中にいるアストラを悪戯っぽい目で見ると、背中を見せて走り出す。
「待て!」
アストラもまた地上に降りて後を追った。彼女は一生懸命に走ってはいない。カップルの背中を突き飛ばして密着させ、街の中の店に飛び込んで、帽子を頭に乗せて出てきた。
「くそ、何処に行く気だ?!」
見慣れない街の中を、後ろ姿だけを頼りに追いかけるアストラは、なかなか追いつけない。
(けど、かなり速い・・・・・ひょっとして、さっき襲われていたのはワザとか?)
時折くるりと一回転して、アストラが追ってくる様子を楽しんでみている。
(相手になってやろうじゃないか!)
ムキになったアストラがスピードを上げる。やがて女性はビルの一つに入った。人で溢れ返るロビーを抜け、裏口に近いエレベーターへと走って行く。閉まりかけたドアを無理矢理こじ開け、アストラはようやく彼女に追いついた。
「さあ追いついたぞ。話してもらおうか」
「何を?」
「あんな三文芝居を何故したかってことさ。言っておくけど、女の人だからって容赦はしない」
女性はくすりと楽しそうに笑った。
「あら、逃げ場ならあるわよ。ほら、そこに」
女性はアストラの後ろを指さした。エレベーターがフロアに到着し、ドアが開く。
「開いたぐらいで・・・・・・あはははははっ・・・・・・」
突然アストラは笑いだした。女性がいきなりアストラの両脇をくすぐったのだ。
「じゃあね〜♪」
咄嗟に体を丸めたアストラの脇を軽やかに通り抜け、女性は再び走り出す。
「あ、ちょっと、待て!」
慌ててアストラは後を追った。時折ステップを踏む彼女は、並んだ扉の一つの前に立つと、帽子をとってアストラを待った。アストラが捕まえようと手を伸ばした瞬間、勢い良く扉が開いた。
ビタン!!
「おぶっ?!」
アストラは顔面を強かに打って、廊下に膝をついた。
「そろそろ来るころだと思っていましたよ、シメオン」
「ありがとルベン。じゃあ、ちょっとこの子、隊長の前まで担いで行って」
【“Man in the Mirror4”の続きを読む】テーマ:二次創作 - ジャンル:サブカル
とある惑星の静かな村だった。村の小さな繁華街に悲鳴が木霊する。
「きゃ〜〜〜〜!」
村の酒場の隅に座っていたアストラは顔をあげ、黙って席を立った。
ひょう、と風が吹き抜ける中、若い女性が数人の男に囲まれていた。
「へっへっへ・・・姉ちゃんこれから俺達と遊びにいかないか?」
「やめてください!」
「そう怖がるなよ。傷つくじゃないか」
「いやーー! 放してーーー!!」
身を捩る女性の腕を更に掴んだ手を、横から伸びた手が掴んだ。
「よせ。嫌がっているじゃないか」
まだ幼さを残した容貌のアストラは、鋭くゴロツキを見渡した。
「なんだあ。お坊ちゃんはお家に帰りな」
「そうそう。これからは大人の時間だよ」
アストラは掴んだままの腕をねじり上げる。
「うわっ?! なんだ、こいつ?! い、イデデデデ・・・」
そのまま力任せに放り投げる。
「うわああーーー?!」
路地の端まで投げ飛ばされたゴロツキが情けない声をあげた。
「あまり忠告を聞かないなら、考えがあるけど・・・・?」
アストラが意味深に残りのゴロツキを眺めまわすと、彼らは一転して怖気づいた表情で後辞去っていく。
「こ、こいつ強いぞ?!」
「やばそうだ!」
「逃げろーーーー!!」
呆気ないほど簡単にゴロツキどもは、仲間を拾ってその場から逃げだした。
「まったく、これぐらいの脅しぐらいで・・・・・」
嘆息したアストラはまだ怯えている女性に近寄った。
「大丈夫ですか?」
「ええ・・・ありがとうございました」
女性はまだ震える体でアストラに抱きついた。
「いいいい?!」
ぽよんと、柔らかな感触がアストラのカラータイマー付近に押し付けられる。
「いや、あの、ちょっと・・・・」
「本当にありがとうございます」
「ああ、このぐらいは別になんともないですから・・・その、離れて・・・」
「お礼をさせていただきたいですわ」
当たる胸の面積がどんどん増えていく。
「大丈夫です、いりません」
「そんなことおっしゃらずに。私のこと、嫌いですか?」
「今助けて初めて顔見たのに好きも嫌いもあったものじゃ・・・・」
ぐいぐいと押し付けられる胸をなんとか引きはがそうとしていたアストラは、不意に周辺の異常に気づいた。
キラキラと光る空間が、自分たちの周りを通りぬけていく。
「な、なんだ?!」
【“Man in the Mirror3”の続きを読む】テーマ:二次創作 - ジャンル:サブカル
みゃう
ナフタリが、タロウの教官室で初めて声をあげた。
「声が出るぐらい、元気になったみたいだな」
「エサとかって何食べるんだろう?」
「ちょっと調べてみようか」
タロウが席を立って端末を立ち上げようとした時だった。
「え?!」
「どうした、メビウス?!」
タロウが振り返ると、メビウスの膝の上にいたナフタリが、一回り以上大きくなっていた。
「な、なっ?!」
全員が驚く目の前で、ナフタリはドン!と、また大きくなった。
「なんだこれ〜〜〜〜?!」
「エメラルドキャットって大きくなるの?!」
「ちょっと待ってくれ!」
タロウは慌てて端末に飛びつき、エメラルドキャットについて検索をかけた。
「わかった! エメラルドキャットは自在に大きさを変えらる!」
だが、振り返った時ナフタリは、既にメビウスと同じぐらいの大きさにまでなっていた。
「あわわ・・・・きょ、教官〜、もう支えきれ・・・・」
「おい、このままでっかくなったら、教官室壊れちゃうんじゃないか?!」
「外に出るんだ!」
ゼノンが窓を空け、マックスがメビウスと一緒にナフタリを支えて外に身を投げた。
「お、重い〜〜〜〜〜!」
「メビウスーーー!」
メビウスとマックスはほとんど落下に近い状態で空を飛び、二人に抱えられたナフタリは、腕の中で更に体を巨大化させた。
テーマ:二次創作 - ジャンル:サブカル
4コマさん>はい、呼ばれちゃいました。易者はセブン21です。
兄さんネタで書いたらすっかり気に入ってしまいました。
yamiさん>今回はレオ兄弟とゾフィー兄さんとの間の溝、無理矢理埋めてみようと思います。
とりあえず、レオはこれでベネ(よし)。
テーマ:小さなしあわせ - ジャンル:日記
レオは若干の不満を抱えつつ、光の国へと向かった。反抗しなかったのは、あの単眼を一瞬見せられたからだった。
(宇宙警備隊の、隊長室、か・・・・・)
セブンから話だけ聞いたことがある、宇宙警備隊。実際に目にしたのはウルトラ兄弟の5人だけ。そのうちのキングと話をしていた者が、隊長のゾフィーだろう。
(俺に何の用だ・・・・?)
やがて光の国の衛星軌道に達すると、入国管理ステーションが見えた。
光の国は、テレポーテーションで直接乗り込んだり、空間を捻じ曲げて直接攻撃を仕掛けたりすることができないよう、特殊な空間閉鎖バリアで覆われている。
レオはステーションの中に入ったが、どうしたらいいのかさっぱりわからない。
(なんだ? 地球みたいにビザとかパスポートとかいるのか?)
おのぼりさんよろしくキョロキョロしていると、壁際の一つに目が止まった。そして点になった。
『歓迎! ウルトラマ”ソ”レオ様!』という、ヘタクソな日本語の垂れ幕を持った、地球で言うなら高校生ぐらいの双子の少女が、あたりをきょろきょろと眺めていた。その二人を、珍しそうに様々な星人が見ている。
「だ、誰だ・・・・・? あんな悪趣味な・・・・」
日本語はセブンが教えたのかもしれないが、書いたのは絶対に違う。レオは頭を一つ振って気を奮い立たせると、双子の近くへと歩いていった。
「あの、さ・・・・」
「「はい?」」
声をかけると見事なユニゾンが返ってくる。
「その・・・・・」
「あ、あなたはひょっとしてウルトラマンレオ様ですねっ?!」
「資料でお顔を拝見させていただきました!」
片方が垂れ幕を畳んで持つと、双子はレオの両腕を取って、ぐいぐい引っ張っていく。
「隊長がお待ちしています。どうぞ!!」
「良かった〜。やっぱりこれってわかりやすいんだね!」
「いや、それは違うよ・・・うん・・・・・」
幼い二人の勢いに呑まれたまま、曖昧に返事をする。
「あ、そうそう」
「言い忘れていました」
二人は突然立ち止ると、レオを振り返る。
「「ようこそ、光の国へ!!」」
テーマ:二次創作 - ジャンル:サブカル
「ありがとうございます」
「いただきまーす!」
砂糖とミルクをたっぷり入れた紅茶を、早速マックスは啜った。
「あちちちち・・・・・」
「もう、熱いに決まってるじゃないか」
メビウスは猫を片手で抱えて席を立つと、ほぼ同時にタロウが立ちあがり、メビウスを軽く視線で制して水を持ってきた。
「ありがとうございます」
マックスが落ち着くと、ゼノンはメビウスの腕にいる猫の頭を撫でた。
「この猫は誰かの飼いネコかな?」
「わからない。ちょっと待って」
メビウスは綺麗になった緑の毛並みを撫でて、首の辺りを触った。
「あ、あった!」
ふさふさした毛に隠れた首輪を発見して、軽く持ち上げる。
「んっと・・・ナフタリって書いてある」
「ナフタリか」
「おまえ、ナフタリって言うんだ」
三人はそれぞれの位置からナフタリのお腹や頭を撫でた。タロウは子供達を見て笑みを深める。
「後は迷子ペットセンターに連れていけば大丈夫だな」
「はい」
お腹を撫でていたメビウスの手に、ナフタリの尻尾がゆらゆらと揺れて当たる。
「あ、起きたみたい」
ナフタリは億劫そうに顔をあげて大あくびをし、前足で顔を洗うと、自分を触っているメビウスの手を見た。
そのまま腕、肩、顔へと視線を移す。エメラルドグリーンの毛並みとは対照的な、金色の瞳がメビウスを見た。
「良かった、元気になったみたいだね。恐がらなくていいからね」
メビウスはそう言って、優しくナフタリの喉を撫でる。ナフタリは最初は嫌がるように顔を背けたが、次第に目を細めてメビウスの指に自分の顔や喉を擦りつけるようになった。
「結構ちゃっかりしたネコだな。さっきはメビを引っ掻いてたのに」
「警戒をする必要がなくなったからだろう」
「愛情を持ってちゃんと接すれば、どんな動物も心を開いてくれるよ」
タロウはエメラルドキャットをあやすようにするメビウスに、目を細めた。
テーマ:二次創作 - ジャンル:サブカル
「タロウ教官〜! いますかぁ〜?!」
「マックス! ゼノン!」
メビウスは窓の外から顔を出した二人を見て、エメラルドキャットを抱えたまま立ち上がった。
「二人共来てくれたんだ」
「どうした?」
ティーポットを抱えたタロウは、窓の外に張り付く二人を見て、また目を丸くした。
「今日は三人そろって窓から入ってきて・・・・」
「へへ・・・・」
「申し訳ありません」
「まあいいよ。一人も三人も一緒だ。座りなさい」
「はい!」
マックスとゼノンはメビウスの両隣に座ると、まだメビウスの膝で寝ているエメラルドキャットを覗き込んだ。
「もう大丈夫なのか?」
「うん。教官がリライブ光線をかけてくれたから」
そう言って見上げるメビウスに、タロウは笑い返す。
「それにしても、何処で拾ってきたんだ?」
「テストが早く終わったから、映画に行こうって街に出たんです」
「そしたらメビウスがこのネコの声を聞いて・・・・」
「へえ」
タロウの視線にメビウスは気恥ずかしくなったのか、少し頬を赤らめた。
「ごめん、二人共。映画に行けなくなっちゃって・・・・」
「問題ない。我々が正式に入隊すれば、Eランク待機でも呼び出しはあるだろう。それの事前訓練だと思えばいい」
「そうそう! 救助活動第一ってな」
二人の言葉に、メビウスは表情を輝かせた。
「ありがとう!」
「三人とも、大分警備隊員らしくなってきたな」
タロウは満足そうに頷くと、四人分のカップを並べて紅茶を注いだ。
テーマ:二次創作 - ジャンル:サブカル
メビウスは空を飛んで、養成所へと戻った。
「しっかり! 頑張って! もうすぐ治してあげるから!」
手の中の小さな緑色の毛玉に必死に話し掛け、タロウの教官室に向かう。
本来は養成所の中を飛んで移動してはいけないのだが、今はそんなことに構っていられない。教官室の窓に近寄ると、外から小刻みに叩く。
「教官! タロウ教官! いますか?!」
丁度テストを抱えて戻ってきたタロウは、窓の外に浮いているメビウスを見て、目を丸くした。
「め、メビウス?!」
回収してきたプレートを放り投げて、窓を開ける。
「どうしたんだ?!」
「タロウ教官、この子を助けてください!!」
メビウスは、本当に微かにしか呼吸できていないエメラルドキャットを、タロウの前に差し出した。
「これは・・・・わかった」
タロウはすぐにリライブ光線をかけた。
「これで、大丈夫だと思うけど・・・・」
エメラルドキャットは乾いた血を纏ったまま、メビウスの腕の中で穏やかに目を瞑っている。さっきよりもずっと強く上下する胸を見て、メビウスは輝かんばかりの笑顔を向けた。
「ありがとうございます、タロウ教官!」
「いいよ、これぐらい」
タロウはメビウスをソファに座らせると、さっき放り出したプレートを拾い上げる。これから採点するテストだ。
「今、紅茶を淹れてあげるよ」
「あ、紅茶なら僕が・・・・」
「たまに遊びにきたんだ。座ってなさい」
「すみません・・・・」
タロウは短く笑うと、タオルを濡らしてきてメビウスに渡した。
「じゃあこれで血を拭いてあげなさい。このネコも汚れたままじゃ嫌だろう?」
「はい!」
嬉しそうにタオルを受け取ったメビウスの頭を撫でて、タロウは簡易キッチンに立った。
テーマ:二次創作 - ジャンル:サブカル
「家族を引き離すなんて、酷いもんだな・・・・」
おおとりゲンはベルリンの壁を見上げて呟いた。壁の前は銃を持った兵士がうろついている。
過去の権力者の横暴によって、壁一枚に隔たれた人達のことを思うと、今は外しているリングを再び指にはめたくなる。
「あ〜、もしもし。そこのお方」
突然背後から声がした。
「そう、あなたですよ。ポケットに紅い指輪を隠している、あ・な・た」
ゲンはぎょっとして振り返った。
ベルリンの路地に、ぜい竹を手に持ち、頭に帽子を被った易者が、卓の上に「占い」という小さな看板を立ててこっちを見ていた。
易者はにこにことゲンの方を見ている。ゲンは全身に緊張を走らせると、そのままつかつかと易者に近寄った。
「あなたは?」
「ワシはただの占い師ですじゃ」
「そんなはずはない」
「おや、占い師が見えない物を言い当てるのが御不満ですか?」
「そうじゃない。なぜ、日本の占い師が、こんなベルリンになんかいるんだ?」
ゲンは眼力鋭く、卓の上に両手をついた。
「ふむ、なるほど・・・・地球では地域によって知的生命体の生息分布が明確に区分されていると・・・・と」
易者が懐から名刺ほどの大きさの金属を取り出すと、そこにホログラムのように文字が浮かびかがった。
「・・・・・!」
もう片手で持ったペンの先が光り、金属から少し離れた中空に文字を書き込む。
「これは一つ勉強になりました。
少々タイミングが早くなりましたが、あなたに伝言を伝えます」
易者の両目が、一瞬、ゲンの知っている単眼になる。
「その目は・・・・ッ!」
「『M78星雲 宇宙警備隊本部 隊長室』。悪いですが、旅の終点はそちらでお願いします」
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「怪我してる!」
「いたのか?!」
「うん!」
路地に走っていくメビウスの後を、マックスとゼノンが追った。
建物の隅に小さく小さく丸まっている緑色の影がある。メビウスが近寄ると、それは「フー!」っと威嚇の声を出した。
「大丈夫・・・・恐がらなくていいよ・・・・」
本来はふさふさとした緑の毛に、赤い血がべっとりと張り付いてその生物を小さく見せていた。
「これは、エメラルドキャットだな」
エメラルドキャットは光の国では愛玩動物として人気のある動物だ。もともとは別の惑星の生物だが、研究用として持ち込まれたものが、後に一般家庭でも飼われるようになった。
「げ。高いんだろ?」
「多分。何処かの家から逃げ出してきたのだと思うが・・・・」
「心配しなくていいよ」
メビウスはエメラルドキャットにそっと手を差し出し、ゆっくりと近寄る。
「すぐに怪我、治してあげるから」
鼻先まで伸びてきたメビウスの手を、その生き物は前足で払った。
「大丈夫、大丈夫。痛くないよ」
その一撃で大分体力を消耗したのか、大人しくなったエメラルドキャットを、メビウスはそっと抱きかかえた。
「可哀想に・・・・こんなに血が出てる」
「こりゃー、仲間同士のケンカだな」
マックスは毛を捲って傷口を見て、それから血の付着したエメラルドキャットの爪を見た。メビウスの胸を力無くカリカリと引っ掻いている。
「銀十字のアニマルセンターに連れて行った方がいいだろう」
「うん・・・・」
メビウスは弱々しく暴れるエメラルドキャットを抱えなおすと、ふわりと浮かび上がる。爪がぱたりと、落ちた。
「!!」
「どうした?メビウス?」
「この子が・・・・タロウ教官のところに行ってくる!!」
テーマ:二次創作 - ジャンル:サブカル
「?」
「どうした、メビウス?」
映画館へ行く道すがら、突然メビウスが立ち止まる。
「うん、今何か聞こえたみたいな・・・・気のせいかな?」
ぃ・・・・
「いや、確かに何か聞こえる」
ゼノンの言葉に、マックスも耳を済ませる。
街の雑踏に掻き消されてしまうほどの、微かな気配を拾おうと、体中のセンサーを全開にして。
みぃ・・・・
「! 聞こえた!」
「こっちからだ!」
「ちょ、おい! 映画は!!」
「ごめん、少し遅れる!」
メビウスとゼノンは今通ったばかりの道を引き返し、音の発生源を探る。
「あー、もう!」
マックスも諦めたような声を出すと、慌てて後を追った。
「何か、動物の声みたいだった・・・・」
み・・・・
「弱々しいな・・・・」
特定するのが難しい、小さな気配を必死になって捉えようと精神を集中させる。
「あ・・・・いた!」
メビウスは習ったばかりの透視能力を駆使して、建物の影で怯えるように体を震わせている、小さな生き物を発見した。
テーマ:二次創作 - ジャンル:サブカル
見直しはOK。
名前は? 書いた。
メビウスは起動しているプレートを落とすと、そっと伏せて席を立ち上がった。
音を立てないように歩いて、ドアを開ける。
廊下には既にマックスとゼノンがいた。
しーっと口に指を当てる。
足音を立てないように、そーっとそーっと。
「イ〜〜〜〜ヤッホゥ!!」
マックスは校舎の外に出た途端、踊り上がった。
「やーっと終わったぜ!」
「うん・・・・ちょっとドキドキしたけど」
メビウスはまだ少し不安げな表情をして、胸を押さえた。
「何処か不安な箇所でもあったのか?」
「問5が難しかったよ」
「そうか。私は問6の方が迷ったな」
「迷ったら一番最初に思った答えを書けばいいだろ」
先を歩いているマックスは、後ろ歩きに切り替えてゼノンとメビウスを見る。
「どうせなら最後まで確認したかったのに・・・・」
「最後のテストぐらい、ぱぱっと終わらせろよ。休みがもったいないじゃん!」
「いや、でも増えても30分・・・・」
「30分というは貴重だぞ、メビウス」
ゼノンの抑揚のない声が諦めの悪いメビウスを両断する。
「そのお陰で映画に間に合うのだ。急ごう」
マックスとゼノンはメビウスの手をぐいぐい引っ張って連行する。
「もう、しょうがないなあ」
メビウスも苦笑しつつ、それに付き合った。
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4コマさん>ハンカチ三枚分の涙、ありがとうございます。
タロウって結構悲しいお話も多かったんです。でも、ウルトラの中でも笑える作品として伝わっています。あの世界の生命力の強さを、メビウスの世界にくっつけてみました。
テーマ:小さなしあわせ - ジャンル:日記
ぼちぼちと人が集まり始めたイベント広場で、軽いベルの音が響いた。
一人のピエロが舞台に上がり、見事なジャグリングを披露する。
「総監、あんなのもできるんだ・・・・」
「隠し芸大会に出れますね・・・・」
茫然とつぶやくジョージやテッペイの横で、ミライはその見事な技を目を輝かせて見ていた。
「凄い! 光太郎さん、超能力を使ってるみたい!」
「おいおい、超能力はないだろう。
・・・・ん? 『光太郎さん』? おい、ミライ・・・・」
リュウが思わず問いただそうとした時、「トロンだ!」とコノミが嬉しそうに叫んだ。
舞台の脇から、トロンが光太郎目指して短い足で走ってくる。光太郎ピエロはジャグリングをやめて、トロンの傍に屈んだ。
「どうだい? 君もやってみるかい?」
トロンがうなづくと、光太郎ピエロは指をパチンと鳴らした。お手玉がトロンの手に出現する。
「きゅい! きゅい!!」
飛び跳ねるトロンに合わせて、会場ではデバンや他のピエロ達が、集まった子どもたちにもお手玉を配った。
「じゃあ、まずは一つから始めるよ」
光太郎ピエロはお客にも爽やかな笑顔を向ける。
一つのお手玉を投げてはキャッチを繰り返す。トロンは数回落としたがそれはお客からの笑いを誘った。
「それじゃあ二つ目だ」
今度は二つのお手玉を投げる。トロンが投げる練習をする横で、光太郎ピエロは観客にもお手玉の指導をした。「できたよ!」という子供の声があがる度に、コノミが嬉しそうに笑顔を輝かせる。
「みんなできたね。トロンもできたね?」
トロンはうなづくと、光太郎のマネをして観客に手を振ってみた。拍手や笑い声が聞こえる。
「すごい・・・・ちゃんとお芝居もさせてるなんて・・・・」
マリナは感嘆のため息を吐いた。
「じゃあ、次は三つでいってみよう!」
本日の舞台が全て終わると、光太郎は座長の前でまた挨拶をした。
「それじゃ、トロンのこと、お願いします」
「ああ。うちの大事な団員だ。任せておけ」
コノミやミライ達がトロンに次ぎ次に別れを告げる。
「元気でね」
「生水は飲んじゃだめですよ」
「ケガとかするなよ」
「車に気をつけるのよ」
「悪いヤツにはついていくな」
「また会おうね」
最後に光太郎がトロンの前で膝をつき、視線を合わせてトロンの手を握った。
「生きろよトロン。この星で・・・・!」
「きゅい!」
END
【“もしも総監が東光太郎だったら第四話14”の続きを読む】テーマ:二次創作 - ジャンル:サブカル
控え室代わりの小さな事務室に戻ると、光太郎はミライ達に説明してくれた。
「昔、お世話になった座長さん達なんだ。デバンは俺の先輩なんだぜ」
デバンはエヘンと腰に手を当てる。
「光ちゃんが戻ってくれればいいのに〜」
「すみません、でも、次のステージぐらいなら出ますよ」
「おう、そりゃあいいな」
座長はピエロの一人に、衣装を出すように言いつける。
「あの・・・・つかぬことをお伺いしますけど」
テッペイは座長に近づいた。
「ん? どうしたぃ?」
「あのデバンって人、地球人、じゃないんですよね?」
「たぶんな」
「多分って、知らないで一緒にいるんですか?」
デバンは早速道具箱から、フラフープを出して練習し始め、トロンはそれを見ていた。
「あいつは舞台が好きなんだ。俺達みたいな仕事は、金よりも人前に立つのが好きでなきゃあな」
「そうそう。座長が『出番だ!』って言うと、何時も返事するから、アタシ達も《デバン》って呼ぶようになっちゃって」
「人を楽しませることが好きなら、それだけで俺達は家族だ」
腰を振っているうちに目をまわしたデバンが床に転がる。仲間のピエロ達が笑った。
「用意できたよ。それじゃ、トロンも一緒に行こうか」
何時の間にかピエロの衣装に着替えた光太郎が、トロンに声をかけた。
テーマ:二次創作 - ジャンル:サブカル
翌日、光太郎はトロンを連れて隣の県にある、大型ショッピングセンターへとやってきた。少し離れたとこを、ぞろぞろミライ達がついていく。光太郎は行先こそ告げなかったが、「私服ならついてきていいよ」と言った。
光太郎は車から降りると、堂々とトロンを連れて通用口の受付に行った。
(ええ?! 大丈夫なのかよ?!)
(あ、何か話をして・・・・通っちゃいました・・・・)
あのコミュニケーション能力は一体どうなっているのだろうと、テッペイが頭を抱えていると。
「おーい、君たちも早く受付すませて!」
当の本人からお声がかかり、ミライ達も慌てて外部スタッフ証を貰った。
イベント広場では、ピエロ達が大道芸をしていた。周りで手をたたいてはしゃぐ子供たちに、変わった着ぐるみのキャラクターが、風船を配っている。
「はい、ありがとうございました〜!
次は2時からお笑い芸人のトークショーになりま〜す!」
進行係のお姉さんの声が入り、ピエロ達は大げさな一礼をして舞台を降りた。
人が散り散りになると、衣装を着たままのピエロ達は後片付けに入った。光太郎はトロンを連れてその中に入った。
「お久しぶりです」
「お、光ちゃん!」
「あらやだ、久しぶり!」
着ぐるみが嬉しそうに光太郎の傍にすり寄った。
「久しぶり、デバン」
光太郎が頭を撫でると、嬉しそうに跳ねる。
「座長さん、この子がさっき言った・・・・」
光太郎はシルクハットの座長の前に、そっとトロンを押し出す。
「ああ、この子か。おいデバン!」
座長は着ぐるみを呼んだ。
「おまえはどうする?」
デバンと呼ばれた着ぐるみは、トロンをしげしげと見て、時折瞼をぱちくりとさせた。その様子を離れてみていたミライは、小さく声をあげた。
「どうした?」
「あのデバンと言う人、ひょっとして・・・・」
「なんだ?」
「宇宙人かもしれません」
「え?」
デバンは不思議そうに見上げるトロンの頭を撫でると、余った風船を差し出した。
「どうやら合格みたいね」
ピエロの一人が(声からしてオカマのようだが)嬉しそうに言った。
「よし! 新団員決定!」
「やった〜!」
ピエロ達が光太郎と一緒にハイタッチで喜んだ。
【“もしも総監が東光太郎だったら第四話12”の続きを読む】テーマ:二次創作 - ジャンル:サブカル
市の図書館にジョジョが入っていたので、うっかり読んでしまいました。
もうため息が出るというか、あの独特のセリフとか動きとか、一気に引きこまれて読むしかないじゃないかーーー!!
5部が特に好きです。ブチャラティ、格好良すぎ。しかし2部のジョセフのトリッキーさも捨てがたい。
読んでからウルトラなネタを考えていたら、ペットメビでウサギのエースがスタンド「ウルトラマンA」を出し、ドーベルマンのベロクロンがスタンド「ミサイル超獣ベロクロン」を出して、
「オラオラオラオラオラオラ!!!!」
「無駄無駄無駄無駄無駄!!!!」
と激しくバトってるシーンを思いついてしまいました。二匹のペットが睨みあうと、町の中ではウルトラマンと超獣が(人間サイズ)暴れていて、でもスタンドだから周りには見えていなくて、ポルターガイストのような激しい破壊活動が。イギーとペットショップみたいに。
でもって、ルナチクスなんかはニンジンを齧りながら「ねほりはほりってことばはよォ〜」とかいうんですよ(笑)
タロウもきっとスタンドを持っていて、メビと一緒にピンチになったりとかするんですけど(VSエースキラーなんかいいかも)で、メビは最初はスタンドを持っていなくて、二匹ともケガをしちゃって、超ピンチの時に、「ぼくがタロウさんをまもらないと!」ってスタンド能力に目覚めるんですよ。うん。
ウサギエースの前歯はエースブレードだ、絶対に。
テーマ:つぶやき - ジャンル:日記
フェニックスネストに戻ってくると、トロンは光太郎の私室に連れられて行った。重苦しい沈黙がディレクションルームに横たわる。
サコミズがコーヒーを淹れ始めた頃、光太郎が戻ってきた。
「総監!」
「トロンはどうなるんですか?!」
「元の星に返すんですか?!」
「ストップ!」
詰め寄メンバーに多少びっくりしながら、光太郎は制止をかけた。
「とりあえず、席についてくれ」
言われてミライ達はバツが悪そうに顔を見合わせると、各々の席についた。
「トロンのことだが、まだ故郷には帰れないと思う。
お母さんのことがあってショックも受けているし、僕と離れたがらないというのもある。それに、子供のうちは自力で宇宙に飛び出せないと思うんだ」
「じゃあ、しばらくここで面倒を見るんですか?!」
「いいや、それはできない」
思ってもみなかった言葉に、騒然となる。
「どうしてですか?!」
「トロンは総監のことをあんなに慕っているのに!
総監だってわかっていらっしゃるじゃないですか!!」
「トロンが可哀想です!」
「お願いします! トロンをここに置かせてください!」
「スッチーナ星ではまだ密猟が行われているんでしょう?! だったら・・・・!」
「それに、トロンのお母さんが死んじゃったのはあたしの所為なんです! お願いします! あたしに面倒を見させてください!!」
「アマガイ君、それは違うよ」
光太郎は初めて厳しい視線をコノミに向けた。想像以上の威圧感に、思わずコノミは棒立ちになる。
「面倒を見るというのは、ペットを飼うとかそんなレベルじゃないんだ。トロンの寿命が1000年、2000年とあったらどうする? 君はどこまでトロンの面倒を見るんだ?
それに、彼は子供とは言え立派な一人の宇宙人・・・・人間なんだ。安易に養護するなんて言っちゃいけない」
「・・・・すみません・・・・・」
再び重苦しい空気がディレクションルームを覆う。コーヒーの香りだけが、軽やかさを放っていた。
「とりあえず、コーヒーでも飲もうか」
「そうしよう。話はコーヒーを飲みながらでもできるからね」
サコミズは人数分のカップにコーヒーを注ぎ、一人一人に手渡した。
「宇宙人を一人保護する、というのはGUYSとしてはとても難しい問題なんだ。我々はあくまで地球を守る立場だからね。もしトロンが危険な宇宙人だから引き渡せと言われたら、引き渡さざるを得ない状況に追い込まれるときだってある」
「そんな!」
「だからこういった時は、色々な星と友好を持ち、他の惑星からの来訪者を保護する組織が必要なんだ。外務省みたいなものがね。
ただ、地球にはそれがない。GUYSで公式にトロンを保護すれば、それは異星人を閉じ込める目的としてでしか扱えないんだ」
「じゃあ、このまま外に放り出せって言うんですか?!」
リュウが光太郎を睨みつける。
「まずはそういった組織を作るところから始めるしかないな。
それまでは、民間に預けようと思うんだ」
テーマ:二次創作 - ジャンル:サブカル
地面には、人間サイズになったトロンの母親が横たわっている。息が弱っているのは、一目でわかった。
「きゅい! きゅーい! きゅーい!」
「・・・きゅ・・・・」
すがるトロンにか細い声をかけ、瞼がゆっくりと降りていく。
「!!」
「きゅーい!!」
叫ぶトロンの目から、大粒の涙が零れた。
「きゅーい! きゅーい! ・・・・きゅーい・・・・」
少し離れて見守っていた、GUYSの面々も息を飲んだ。
「っく・・・・」
リュウとジョージは顔をそむけ、マリナとコノミは口元に手をやって嗚咽が漏れるのを防ぎ、テッペイは視線を地面に落とした。ミライは握った拳に更に力を込め、サコミズは黙ってトロンを見ている。
光太郎はトロンの傍に膝をつき、トロンの頭を優しく撫でた。
「ごめん、トロン・・・・」
「きゅ・・・・」
トロンは声が出なくなると、光太郎にしがみつく。
「あたしの所為だ・・・あたしが、あの時転んだりしなければ・・・・」
「いえ、僕が、もっと早く変身していれば・・・・」
後悔の言葉を口にする二人の肩を、ポンとサコミズが叩いた。
何も言わずに温かい視線を送る隊長に、二人は口を噤んで再度トロンと光太郎の方を見る。
泣きやんだトロンを撫でたまま、光太郎は口を開いた。
「トロン、君はどうする? 故郷の星に帰るかい?」
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ゾフィーは慌てて声をひそめた。
「どういうことだ?」
「はい、おそらくは、先に御兄弟を倒そうとする可能性があるのではと。今はこうして揃っていらっしゃいますし」
「だが、確実な出所ではないと言ったな」
「ええ。いくつかの断片的な情報をつなぎ合わせて、私が組み上げたにすぎません」
「その上での君の意見は?」
「今は御兄弟で揃われない方がよろしいかと」
ゾフィーは嫌そうに口元を歪めた。
「それはできない。せっかくのタロウからの誘いだし、私の休みも滅多にとれないし。
それに、テンペラー星人が我々を追うというのなら、地球の近くで返り打ちにしてやればいいだろう。全員揃っているんだ」
「でしたのならば、それはタロウに一任を」
ゾフィーの視線が鋭くなる。
「なんだと?」
それをディナは怯まずに、同じままの強さの視線を保って見つめ返した。
「先日、アニマル星へと移送が決まったトータス親子の件ですが、こちらに関してはタロウからも、また救援に向かったセブンからの報告書も、異動依頼書も出ていません」
「それは私の方で・・・・」
「何時まで隊長が面倒を見られるおつもりですか? それでは例え優秀な成績で養成所を卒業しても、一人前の警備隊員にはなれないのではありませんか?」
「う・・・・・」
ディナの隙のない正論に、ゾフィーは言葉を詰まらせた。
「御子息が半人前のままでは、大隊長の方にもご迷惑がかかるでしょう。
隊長」
無表情なので決して睨んでいるわけではないのだが、強い視線を向けられて、ゾフィーは観念したように、詰めていた息を吐きだした。
「わかった。確かにそうだ。私はもうタロウの兄より隊長を優先させなければいけない」
「ご理解いただいて幸いです」
ゾフィーは背筋を伸ばすと、軽く手をあげて、弟たちの後を追う。
「地球前で止められるか、調べるだけのことはするぞ」
「どうぞ。お休みを楽しんできてください」
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点滅をするカラータイマーの音に、ドロボンは棍棒を止めた。そのままニタリと笑う。
「そうだ、おまえのカラータイマーをもらおう」
メビウスが弾かれたように顔をあげる。
「んだと?!」
「ウルトラマンのカラータイマーがあれば、ウルトラマンと同じ力を得ることができるのだ!」
嘲笑するドロボンは、メビウスを更に蹴って仰向けにすると、無遠慮にその胸に手を置いた。ビクリ、と銀色の肢体が跳ね上がる。
「ミライ!!」
「ミライ君!!」
メビウスは思わずドロボンの手を除け様とするが、叫ぶリュウ達の後ろで、大きな瞳を潤ませるトロンの姿が目に入った。
力を抜いて顔を背けたメビウスのカラータイマーの周りに、ドロボンの指が食い込む。
「ミライーーーー!!!」
「はっはっはっはっは・・・・! これでウルトラマンの力も・・・うぼわおう?!」
メビウスを見上げて得意そうに喋っていたドロボンは、そんな言葉など聞いていない光太郎のタックルで地面に押し倒された。自分が見られていなければ良かったのだ、光太郎は。
ドロボンが倒れたはずみでトロンが地面に落ちる。
光太郎はドロボンに馬乗りになると、顔面に一発入れた。そのままトロンを振り返って叫ぶ。
「早く逃げるんだ!」
「きゅい!」
トロンは母親の時と同じようにとまどった。
「貴様、よくも!」
ドロボンが光太郎を自分の上から振り落とす。棍棒を拾って頭上に高く振りかぶった時だった。
三条の光線が、ドロボンの体を貫いた。
そのまま仰向けに倒れたドロボンは爆発した。
「総監、ご無事で」
トライガーショットを下したサコミズが近寄って手を貸す。
「ああ」
「ミライ、今だ!!」
リュウの声に、メビウスもドロボンの顔面に強烈なパンチを当てて退ける。そのまま飛び起きると、全身に紅い炎を纏った。
よろけながら立ち上がるドロボンがその姿に目を見張る。
メビュームバーストが、卑劣な盗人を燃やしつくした。
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「ほらほら、兄さんたち、遅い、遅い!」
警備隊本部の廊下を、子供のようにエースが駆ける。
「こら、走るんじゃない。子供じゃないんだぞ」
その後ろをのんびりと歩くウルトラマンが窘める。
「何言ってるんですか! タロウの用意したメシが冷めちゃったらどうするんです!」
「いいじゃないですか。久しぶりに地球に行けるんだから、嬉しくて仕方ないんですよ」
「こいつはついこの間まで地球にいたんだぞ」
ジャックがやんわりとエースを擁護すると、セブンが厳しい声を出した。ただし、顔は笑っているが。
「いいじゃないか、今日ぐらい。おまえだって地に足がついていないだろう? 私が許可するぞ、エース」
通りかかる部下達に軽く手をあげて応えながら、ゾフィーは前を行くエースに笑いかけた。
向こうの廊下の角を直角に曲がり、ブルーの姿が見えた。真っ直ぐゾフィーの方へと歩いてくる。そのまま素通りもせずに、ぴたりとゾフィーの真正面で止まった。
「ディナ・・・・どうした?」
「隊長、お休みに入られたところ申し訳ありませんが、新しい情報が入りましたので・・・・・」
ゾフィーは一つ頷くと、ウルトラマン達に先に行くようにと促した。
「いいんですか? 待ちますよ?」
「大丈夫だ。軽くパトロールもしていくつもりだったし。先に行っててくれ」
「じゃあ行ってるぞ」
少しの遠慮の素ぶりも見せず、セブンが兄弟たちを引っ張って、先に歩き始めた。
「やれやれ、セブンのやつめ・・・・。
それで、どうした?」
ディナはプレートを自分の方に向けたまま起動させる。
「あまり確かな筋ではないのですが、テンペラー星人の狙いがわかったと」
「そうか。それで? 奴らの目的は、ここか? それとも・・・・・」
「あなた方御兄弟である可能性が非常に高いと」
「なんだと?!」
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「きゅ・・・・」
だみ声に振り返れば、トロンを片手で掴んでぶら下げているドロボンが、もう一匹いた。
「あいつ・・・・!」
マリナが歯噛みする。これほどの至近距離に近づく足音に気付かなかった。
メビウスとトロンの母親も、ドロボンの声に下方に視線を向けて立ち尽くす。
倒れていたドロボンは、棍棒を拾って立ち上がるとメビウスを殴りつけた。
「ミライ!」
地響きを立てて倒れたメビウスを、更にドロボンは打ち据える。
「きゅむ!」
飛びかかって噛みついた母親を振り払い、ドロボンは棍棒を振った。光線が母親の腹を直撃する。
青い毛が焼け焦げ、母親が地面に倒れた。
「やめてーーー!!」
コノミが絶叫をあげる。涙を零して人間サイズのドロボンを睨みつけると、それはトロンを持ったまま嘲っていた。
「この野郎・・・・」
リュウとジョージも唇を噛むが、トロンがいるので手が出せない。
「さあ、お前たちも武器を捨てろ!」
ドロボンは得意そうに言って、棍棒でGUYSのメンバーを順に指す。
(何か、何か方法はないか・・・・?)
リュウはドロボンを睨みつけながらトライガーショットを投げ捨てた。
倒れた母親に向かって、巨大なドロボンが手を伸ばす。それを見たメビウスは、咄嗟に自分の身を投げ出して、母親の上に覆いかぶさった。
「邪魔だ、どけ!」
ドロボンは首を横に振るメビウスの背中に何度も棍棒を振りおろした。衝撃に何度か苦痛の息が吐かれる。カラータイマーが鳴りだした。
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「あ痛た! 痛い! 痛い!」
ドロボンは情けない声をあげ、剛腕を振ってトロンの母親を振り払った。
「きゅ!」
母親は鋭くドロボンを睨みつけ、尻尾を振ってトロンに逃げろと言っているようだった。
「今のうちに逃げるんだ!」
「でも!」
サコミズの言葉に、コノミが食い下がる。
「おめえ、よくもやったな!」
ドロボンは棍棒を振り回すが、母親は素早く逃げ回る。
棍棒の先から光線が発射された。足元で起きた爆発に立ちすくんだところを、棍棒が殴打する。
「きゅーい!」
トロンが悲しげな声をあげた。
ミライはドロボンに向けて走った。
「待つんだ、ミライ君!」
光太郎の制止を振り切って、銀色の巨人が姿を現した。
セヤッ!
メビウスはドロボンの傍に降り立つと、棍棒を振り上げる手を受け止め、トロンの母親から引き剥がした。
「お! メビウスが出てきたな! 丁度いい。お前も一緒に売り払ってやる!」
ドロボンは再び棍棒をつきだして光線を発射した。メビウスは両手を前に突き出してディフェンサークルでこれを防ぐ。
やたらと振り回される棍棒の下をかいくぐり、強烈なパンチを放った。よろけるドロボンに更に追い打ちをかけるように正打のラッシュをかける。
「ああ、痛い! 痛い!」
ドロボンは怒り冷めぬメビウスの攻撃からほうほうの体で逃げ出した。
「きゅぴ!」
そこをトロンの母親が噛みつく。
「よっしゃ!」
痛快劇に、リュウとジョージは拳をぐっと握った。
「おっとお前ら動くなよ」
不意に背後から聞こえた声に、背筋が強張った。
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「とあっ!」
博士の真っ直ぐに伸びた足が、上段の的に見事にヒットする。
「君は型が綺麗だな」
ゾフィーは腕を組んで感心し、何度も頷いた。
「そ、そうか?」
構えを解いた博士は少し照れくさそうにゾフィーのいる方向とは違うところを見た。ここ数日、ゾフィーに会わない間も自主的に練習していたし、時には研究を中断して腕立て伏せをやったりとしていた成果が出始めているようだった。
「組手とかはまだないのか?」
「そうだな。大分できてきたし・・・・バック転や側転はできるか?」
「バック転?」
「攻撃を避けるのにいいぞ。これも同時進行で練習するか」
博士は不満そうに目を眇めた。
「・・・・おまえ本当に強いのか? この間から全然俺の相手をしていないだろう。今だって組手を延期するし・・・・」
「失敬な。このスターマークが目に入らないのか? これでも結構強いんだぞ」
「はん、どうだか」
えへんと胸を張るゾフィーに、博士はそっぽを向く。
「そんなに格闘をやりたがらなくてもいいと思うんだがな。
それに、2,3日留守にするから、どっちにしろ今日やるより後でやった方がいいだろう」
「留守?」
「そうだ。明日から地球に行ってくるのだ♪」
相変わらず”弟バカ”な発言に、博士はげんなりと肩を落とした。
「だから今日はバック転と側転と前宙とバック宙の練習にしよう。
最初は砂場でやろう」
ゾフィーは的を片づけると、すたすたと砂場の方に歩いていく。
「あ、おい!」
置いてけぼりをくった博士は、慌ててその後を追った。
テーマ:二次創作 - ジャンル:サブカル
梢の向こうからトロルに似た大きな顔が、ぬっと現れる。
「ドロボン!」
光太郎はその姿を見て視線を鋭くした。
「ドロボンってあの泥棒怪獣ですか?! ウルトラマンのカラータイマーを奪ったという?!」
「ああ! 小ずるい知恵を持っている。
攻撃開始!」
言うなり光太郎はトライガーショットを撃った。レッドチェンバーからアキュートアローが発射され、ドロボンに命中する。
地上から更に立て続けに赤いビームが奔った。
「ぐおう?」
ドロボンはビームから顔を守るように、棍棒を持った腕を振り回す。
「早くガンフェニクッスのところへ!」
サコミズが促し、リュウとジョージが殿につく。時折振り返りながらトライガーショットを撃ち、ガンフェニックス目指して走った。
ドロボンは神経が鈍いのか、それほど痛がるようにも見えず、棍棒を振り回して追いかけてくる。
「きゃあ!」
コノミが木の根に躓いて転んだ。
「コノミ!」
「コノミさん!」
「きゅい!」
トロンが母親の腕から抜けて、コノミの傍に近寄った。
「ダメ! トロン、逃げて!」
「きゅーい、きゅーい!」
コノミの手を引っ張ろうとするトロンの上に、赤いビームを受けながら、ドロボンの手が伸びてきた。
「きゃあっ!」
思わず目を瞑ったコノミだが、衝撃は地響きとしてきた。
「きゅきゅっ!!」
巨大化したトロンの母親が、ドロボンの腕に噛みついていた。
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ゾフィーが先日のカフェに行くと、すでに待ち合わせ相手は来ていて、ヌルワラン茶を啜っていた。
「やあ、どうも」
「遅くなってすまない」
「いえいえ。こうして人を観察するのも、いい勉強になりますから」
灰色のウロコのような肌をした人物は、ゾフィーが目の前に座ると、一瞬だけちらりと、本来の金色の単眼を見せた。
「次の君への頼み事は、擬態のコツを教わることだな」
「何、簡単です。要はなりきり。お芝居の練習ですよ」
セブン21は指が三本しかない星人の指の一つを振って見せた。
「そうか? 私なんかそれ以前の問題だ」
擬態はしていないが、肘から先をぷらぷらさせる。
それからゾフィーはセブン21の前に、紙でできた本を一冊置いた。
「君へのお礼は何にしようか迷ったのだが、先日エースが薦めてくれたフィクション作品が気に入ってね。たぶん、君も喜ぶと思う」
「ほう、どんなものですか?」
セブン21はぺらぺらと本をとってめくった。絵ばかりである。
「読み方は、こっちからこっちへと読む。
これは変装の達人の泥棒を主人公にした話でな。泥棒というと聞こえは悪いが、話の筋は良いし面白いぞ。エースはこれに出てくる刑事が好みらしいが」
「なるほど。悪役から見た世界、というのも確かに必要ですな。変装の達人というのがまた良いし。
ありがとうございます」
「気に入ってくれると嬉しいが」
ゾフィーはにっこり笑うと、席を立った。
「もう行くんですか?」
「ああ。この後体を鍛えるつもりだ」
「お忙しいでしょうに、更に体を鍛えるんですか?」
「とても気晴らしになるよ。体にもいいし」
それじゃ、と軽く手を上げ、立ち去るゾフィーを見送ると、セブン21は早速地球のマンガを読み始めた。
ヤキソバパンを二つ買って運動公園にいくと、柵に凭れかかった博士がゾンビのように顔をあげた。
「大丈夫か? 今日は止そうか」
「・・・遅いぞ・・・・・・もう、腕立て伏せと、腹筋は・・・・お、終わった・・・、から、な・・・・・」
「ええっ?!」
驚くゾフィーの前で、博士はニヤリと笑ってみせた。
「・・・・じゃあ、今日は打撃の基礎をやるか? 昨日できなかったし」
ゾフィーはヤキソバパンの入った袋を柵にひっかけると、博士を支えるように腕を引っ張った。
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