もしも小話

アニメや特撮等、筆者の見たものの「もしも~」的な話を載せたりするブログです。無断転載禁止。

天から来た勇者18

とふっ、とメーテの体が何かの上に落ちた。思ったよりも痛くない。死ぬのはこんなに簡単だったのだろうかと、薄らと目を開ける。金色の光が目に入って眩しかった。
一瞬の現を、ガーゴイルの咆哮が引き裂いた。
(私、まだ生きてる・・・・!)
でも、どうして。
生ぬるいが、突風が吹いた。ガーゴイルの翼が起こした風が起き上がりかけたメーテを再び何か黒いものの上に押し付ける。
『無事か?』
とても久しぶりに聞いた大人の男の声に、メーテは顔をあげた。大きな影が空を遮っている。影の正体は、よくわからない。その代わりにメーテは見た。
天から降ってくる、光の柱を。

広い庭はバラで埋まっていた。父が母のために世界中から集めてきたバラが、季節を問わず咲き誇っていた。その中でも東屋に絡んだツルバラをことに母は好んでいて、個人を示す紋章に、香水にと、そこかしこに母の痕跡はあった。
『シリアス』
母の笑みにはいつもツルバラの香りがした。
メーテの髪紐からもツルバラの香り。
『大丈夫だって。あいつらが必ずあの子の事を助けるから』
お子達が、勇者達が、生臭いガーゴイルの息をふき飛ばし、後にはツルバラの香りが残る。
助けられた彼女は必ず微笑むはずだ。ツルバラの香りと一緒に。
シリアスはトリガーから指を外すと、メーテの髪紐を解いて宙に投げた。
「見ていろ、勇者ども・・・・・!」
プラネットバスターの照準が更に狭まる。メインスクリーンのターゲットスコープが更に精度を増して拡大され、シリアスはそれに合わせて出力の調整をした。

レオンカイザーがメーテをキャッチしたのを見て、お子達はほっと胸を撫で下ろした。
「よっしゃ!」
「後はあの怪獣だけだ!」
「がんばれ!」
空影が再びゴルドランの背中に戻った。
『いかん、間に合わんでござる!』
『何?!』
ゴルドラン達が天を仰いだ瞬間、一条の光の柱がガーゴイルを貫き、その肉体を霧散させた。
『い、今のは・・・・・』
『シュバンシュタインの・・・・』
『だが、もう去っていこうとしている』
『どういうことだ?』
『わからん』

タクヤ達の目の前に、レオンカイザーがそっと少女を下した。
「メーテ!」
「メーテ!」
ニーニャやアマタ、プエルが泣きながら飛びつく。
「大丈夫、大丈夫よ。
え、ええと・・・・」
振り返ったメーテは巨大な金属の人形にとまどって声を失う。
「あ、大丈夫、大丈夫。そいつらが助けてくれたんだからさ」
気さくに話しかけてきた見知らぬ少年にもまた、メーテはなんと言っていいのかわからずに、辺りを見渡した。
「シリアスは? シリアスはどうしたの?」
「知らねえよ、あんな奴。どうせ逃げ出したんだろ」
「ロイテ!」
毒づくロイテに、とっさにメーテは厳しい声を出す。
「ま、まあまあ落ち着いて」
「そうそう」
「シリアスのことだったら心配ないよ」
「あなたたち、シリアスのことを知っているのね?!」
小さな子を抱えたまま、見上げるメーテに、タクヤ達は頭を掻いてお互いを見やる。
「あ、まー、知ってるつーか、なんつーか」
「俺達、何時の間にシリアスの知り合いになったんだ?」
「ちょっと予想外の展開だよね」
「何わけのわからないこと言ってんだよ」
ロイテが不機嫌そうにお子達を見る。
「知ってるなら早く言えよ」
「う~~ん・・・・」
タクヤが木陰から見下ろしているドラン達を見ると、ファイヤーシルバーとスターシルバーが指で空を指差し、他の連中はうなづいた。
「お空の向こう、かな?」
「はあ?」
「ガーゴイルを倒して、もう離れていったんだ」
メーテは目を見開いた。
星が綺麗だった夕べ。
「倒したの? ガーゴイルを?」
ニーニャ達を抱えていることすら忘れ、震える声でたずねる。
「うん」
「メーテ?」
ニーニャがまるっきり自分を構わなくなってしまったメーテに不安を抱いて、メーテの服を引っ張った。
「あ、ああ・・・・ごめんなさいね。
ユーバ、あなたの言った通りだったわね」
「え?」
いきなり声をかけられ、ユーバは驚いた。
「伝説の勇者は、やっぱりいたのよ」
メーテは夢見るように微笑んだ。



                       END


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天から来た勇者17

『ゴルドラン、上空に高エネルギー反応があるでござる!』
ジョイントしている空影から声をかけられ、ゴルドランは上を見た。カメラの精度をあげれば、成層圏で待機しているシリアスの艦隊が見て取れる。
『この惑星ごと消滅させる気か?!』
『おそらく』
今すぐに止めに行かなければ、主たちが危ない。しかし、それ以上に今は主に命ぜられたことがある。スカイゴルドランは正面で腕と尾を振るう怪獣を見上げた。
『レオンカイザー、行くぞ!』
『心得た!』
パワーストーンの共鳴を生かし、黄金の勇者たちがうなづきあう。

エネルギーの充填が完了した。ターゲットスコープは惑星ムッティ全域を照準に入れていて、後は引き金を引くだけだ。
けれどもシリアスの指は微かに震えて、震える度にツルバラの香りを漂わせる。
今、撃てば
撃てば邪魔なお子達は消え、勇者はパワーストーンに戻る。使命が果たせるのだ。

レオンカイザーが地面ギリギリにまで高度を落とすと、スカイゴルドランがメーテを掴んでいる手に向かって飛んだ。ガーゴイルがメーテを掴んでいる手を振りおろす。その瞬間、空影がゴルドランの背中から分離した。ゴルドランが地面に着地し、空影は飛翔剣を逆手に持って振り下ろされた腕に向かって斬り上げる。
不意にメーテの全身から圧迫感が消え、代わりに浮遊感が襲った。支えるものが何もない、本当の空中。それを認識した瞬間、恐怖が襲った。
「っ・・・・きゃあーーーーー!!」
怖い怖い怖い怖い・・・・・・
何もかもが怖い。ガーゴイルも、周囲に浮かぶ金属の巨大な人形も、ロイテやニーニャの泣き声すらも、メーテの恐怖の対象だった。

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天から来た勇者16

ガーゴイルはしつこくまとわりついてくる勇者たちを、威嚇するようにコウモリのような翼を広げた。
『逃がさん!』
それを逃げる動作だと思ったゴッドシルバリオンがトライランサーからツインビームを発射する。紙を突き破る矢のように、二本のビームが皮膜を貫いた。
ガーゴイルが咆哮をあげてのたうちまわる。
「きゃあーーーー!!」
握りしめられたまま高い位置で振り回され、メーテは気を失いそうになった。
「メーテ! メーテ!」
たまらず走り出そうとしたロイテを、タクヤ達は慌てて止めた。
「やめろって危ないから!」
「ゴルドラン達が、必ずなんとかするから!」
「おまえ、こいつらの面倒みなきゃいけないんだぞ!」
見ず知らずの少年達に、あまりに当たり前のことを言われ、ロイテは唇を噛んでニーニャ達を見た。


シュバンシュタインにランチが収納される。シリアスはすぐに直通のエレベーターに乗り、ブリッジへと上がった。大股で歩く仕草に、短いマントがひらりと舞った。
「プラネットバスター、発射準備!」
シリアスの命令とともにシュバンシュタインの主砲が起動する。トリガーが床からせり上がり、メインスクリーンに惑星ムッティの全景が表示された。その両脇のサブスクリーンには、拡大された地上の様子が移されている。ジャングルの上空で勇者たちが飛びまわり、巨大な翼を広げた凶悪の獣の手には、小さな人形のような少女が握られていた。
「・・・・・!」
それを見た途端、トリガーにかかった指先から、ツルバラの香りがした。メーテの髪留めが巻かれたままの指から。

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天から来た勇者15

「助ける? 何故、私にそのようなことを・・・・」
シリアスは眦をきつくすると、タクヤの手を無視して立ち上がった。タクヤはそれを気にした様子もなく、あっけらかんと言い放った。
「だって知り合いみたいだろ?」
「え?」
「俺たち見てたんだ」
「君が怪我をして手当されてたの」
カズキとダイもこの緊迫した状況の中、笑ってみせた。
スカイゴルドラン達は各々刀や槍を持ち、ガーゴイルの腕を狙って攻撃を仕掛けていた。
『でーーい!!』
『ぬおおーーー!』
『とあーーーー!』
『でやーーー!』
だが、ガーゴイルはそれを、メーテを持っている手を振り回して防ごうとした。
「きゃーーーー!!」
『何っ?!』
『いかん、離れろ!』
間合いをとった勇者達に向けて、ガーゴイルは太くて長い尾を振るった。それを辛うじてかわす。
『くそう、近づくことができない!』
ゴッドシルバリオンがトライランサーを握りしめる。
メーテは直感的に彼らは味方だと判断した。
「あたしのことはいいから、早く、この、モンスターを倒して! あ、あたしなら、とっくに・・・・覚悟はできてるんだからぁっ!」
メーテの声は震えていたが、はっきりとした決意はシリアス達にも届いた。
「メーテ!」
「メーテ!」
ユーバやアマタが叫ぶ。

  くーん

シリアスの服の裾をこっそりとレイザーが引っ張った。
「レイザー、どうしたのです?」
レイザーはしきりにシリアスの服を引っ張り、首を振った。あっちへ行けと。
「レイザー、私だけ逃げろと? このお子達の前で、おめおめと逃げろというのですか?!」
シリアスが睨みつけても、レイザーはびくともしない。ただただ、同じ方向を見るばかりだ。その間にも、上空ではスカイゴルドラン達がなんとかメーテを救出しようと奮闘している。
シリアスはレイザーの行動にイラつきながらも、愛犬の示す方向を見た。密集した木々の間に、白いメタリックカラーが微かに見える。
「あれは・・・・・!」
シュバンシュタインから乗ってきたランチだ。あれに乗ればすぐにこの惑星から離れることができる。
(だが、私に逃げることをしろと? お子達の一人も殺さず、パワーストーンの一つも手にせず?! そんなこと・・・・)
だが、ランチを見た途端に、シュバンシュタインに戻ってからの自分の動きも計算し始めた。
(あが、プラネットバスターで惑星ごと破壊すれば、残るはパワーストーンのみだ。お子達も勇者も消える)
「うえっ・・え・・・メーテ・・・メーテ・・・・」
ニーニャの耳障りな泣き声に苛立ったシリアスは、それを実行することにした。
「がんばれ、スカイゴルドラン!」
「レオンカイザー、後ろに回り込むんだ!」
タクヤ達が声援を送る中、そっとレイザーを伴ってその場を離れる。最後にそっと、苦悶の表情を浮かべるメーテを見上げて。
ランチの姿が見えると、完全に走り出した。
機内に入るとすぐに通信機のスイッチを入れた。
「シュバンシュタイン、これより帰艦する!」

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天から来た勇者14

「メーテ!」
「メーテ!」
ニーニャ達が叫ぶ。ガーゴイルは獲物を捕らえた喜びに咆哮をあげた。
「くそ! メーテを放せ!」
ロイテはとっさに構えたボウガンから矢を放った。それはガーゴイルの腹にすら届かずに地面に落ちた。
「ああっ・・・・・」
加わる握力にメーテが悲鳴をあげる。
「メーテ!」
「やめろ!」
タクヤがロイテからボウガンをひったくる。
「何するんだ!」
「そんなんじゃ届くわけないだろ!」
「そうだよ! それに、あの女の子に当たったらどうするの!」
ダイも叫んだ。
「うっ・・・うわ・・・・うわーん!」
頭の上で聞こえる怒鳴りあいにニーニャが泣き出す。アマタはまだ、ニーニャを抱きしめられるほど、冷静にはなっていない。
「メーテ・・・・・」
シリアスはまだ地面に膝をついたまま、メーテを見上げた。泣き続けるニーニャの声が酷く煩い。
「シリアス・・・・?」
タクヤがその微かなつぶやきを拾った。
メーテを掴んだガーゴイルの手が、徐々に口へと近づいていく。
「やめろーーー!!」
全員が叫ぶ中、ガーゴイルの後頭部が爆発した。
『主よ! 遅くなってすまない!』
『無事であったか?!』
『主ーーー!』
『ご無事でしたか?!』
青空とは全く対照的な黄金の翼がガーゴイルの横をすり抜け、子供たちの頭上で止まった。
「スカイゴルドラン!」
「皆も!」
ガーゴイルが乱入してきた異物を見下ろした。
「な、なんだよ、こいつら・・・・」
ロイタやユーバは狼狽してタクヤ達を見たが、見られた本人達は気づいていない。
『気をつけろ、人を手に持っている』
『うむ』
「皆、その人を助けるんだ!」
『心得た!』
主の命に、勇者たちは各々の武器を持ち、ガーゴイルへと立ち向かっていく。
それを見送ったタクヤは、シリアスの前に手を差し伸べた。
「大丈夫だって。あいつらが必ずあの子の事を助けるから」

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