もしも小話

アニメや特撮等、筆者の見たものの「もしも~」的な話を載せたりするブログです。無断転載禁止。

観光に行ったらヒーロー扱いされたんだが65

ヌイグルミは確かに合体した。何故各所が変形するのかわからない。裂けたり分離した場所から綿や布が落ちたりはしなかったが、まあとにかくロボットみたいに合体した。
そしてぼちゃんと海面に落ちた。大量の海水を吸っているためだ。元は可愛いヌイグルミだったのに、海から蘇ったカラフルなゾンビみたいな様相になってしまっている。それがビチャビチャと海水を滴らせ、ウルトラマンに迫っていった。
ウルトラマンは顎に手を当てて首を捻るという、実に人間臭い動きで、そのカラフルな物体の動きを見ていた。
接近したヌイグルミロボットは、べちゃりとウルトラマンに腕を叩き付けた。
セオドアが見る感じ、結構痛いのではないだろうか。濡れたタオルで叩かれたぐらいの感じで。
ウルトラマンは少しびっくりしたぐらいの動作で腕を下げると、ヌイグルミロボットの腕を掴んだ。そのままヌイグルミロボットの足元を見る。遊覧船は港にすべて避難していたが、この質量のものが湾内で動いたので高波を食らっていた。小型の個人所有のボートなどは岸壁に乗り上げ、完全に壊れている。
腕を掴まれたヌイグルミロボットは足を上げてウルトラマンの腰のあたりを蹴りつけた。そしたら布が折れ曲がった。
滴る水とふにゃふにゃの体に、ウルトラマンは脅威を感じなかったのだろう。掴んだ腕をぶんと振ると、ヌイグルミロボットはたちまちゴールドステージよりも高く放り上げられた。
続いて真っすぐに突き出された右腕から発射された熱線に、巨大なヌイグルミの集合体は海水ごと蒸発した。
シュテルンビルトに大被害をもたらした存在にしては、あまりにあっけない最後だった。
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観光に行ったらヒーロー扱いされたんだが64

セオドアの視界に入るシュテルンビルト湾に、巨大なライオンのヌイグルミが落ちてきた。幸いというべきか、本当にヌイグルミだったので水柱はあまりたたず、だんだんと水を吸って沈んでいく。次いで陽光を一瞬巨大な影が遮ったと思うと、今度はワニのヌイグルミが落ち、そしてその後から、銀色の巨体が水面に降り立った。
「あ、あれってウルトラマン?!」
周囲の人達も、突然現れた巨人と複数のヌイグルミに呆然とし、続いて騒ぎ始めた。ずぶ濡れのヌイグルミ達が海面から顔を出す。毛も中のクッションもたっぷりと水を吸って重たく、のたのたと。やや遅れて、他にもヌイグルミ達が降りてきた。先の二体と同様、だんだんと濡れて沈み、頑張って水面に顔を出す。
ヘリコプターのうるさい音がした。街頭ビジョンにヒーローTVのカメラが巨人を映す。
「仕事早いなー」
ちょっとした皮肉だった。ヒーローもヒーローTVも好きだが、このヘリコプターの音はどうも好きになれない。
目の前には圧倒的な存在を示す銀色の体。それをTVカメラは斜め上から見下ろしている。
ネクストの出現とほぼ同時期に、日本を中心として飛来した宇宙人。セオドア達がTVのUMA番組で見るような不気味なグレイの想像図に似ているのに、下っ端小悪魔のようなそれらとは一線を画する神々しさと慈愛と、ついでに巨体を持っている。他にも赤い体を持ったウルトラマンもいるが、セオドアはあまり詳しくない。ただ、体が大きくて銀色が赤い色をしていればウルトラマンだ。
ウルトラマンは、自分と同じぐらいの大きさになったヌイグルミをどうしようか、少し困っているように首を傾げた。
その目の前で、湾の底に足をつけていたヌイグルミ達が、超頑張ってジャンプをした。ただしそれはウルトラマンに向かってのものではなく。
「「「合体したーーーーっ?!?!」」」
超合金ロボットみたいに合体するためだった。

あなたの為なら壊します39

「おお~! 本当に来た!」
「アルバイト希望者ですか。学年とクラスは? 養成所側の許可は取ってありますね?」
一番奥のデスクに座る隊長の両脇から、二人の女性が80を値踏みするように見つめる。80は慌てて自分のクラスと学籍番号、養成所のアルバイト許可証を差し出した。キルシュとペシェが折り畳みの椅子を持ってきて、ゾフィーの前に座るようにと言われる。アルバイト許可証を見ただけ、ゾフィーはポンと判子を押した。
「うむ、では採用だ」
「え、面接とかないんですか?!」
「教えて使えないようならば不採用にします。試用期間兼面接です」
「は、はいっ!」
「ディナさん、そんなに最初からハードルをあげなくても。
あ、お茶をどうぞ。擬態はできます? 飲食はできるようにしておいた方が、色々な惑星に行ったときに便利ですよ」
「あ、はい。ありがとうございます」
ソーサーごと受け取ったティーカップをどうしようかと持て余していると、目の前で同じように渡されたゾフィーが、優雅な仕草でカップを口につけた。なるほど、ああすればいいらしい。『食べる』ことは授業で習ったので、後は問題がない。
「ああ、そういえば」
ゾフィーがカップをソーサーに戻してぐるりと部屋を見渡す。
「うちの部署に私以外で男が入ったのは初めてだな」
「男は根性がないんで~」
「でも先輩はなんとなく根性がありそうなので連れてきました」
「私達の目が正しいって証明するためにも、頑張ってください」
うわあ、なんか怖いところに来ちゃった。え、女の人ってみんなこんななの?
慄く80に向かって、ゾフィーはのほほんとした笑顔で聞いた。
「ああ、面接代わりと行ってはなんだが、君がアルバイトをして金銭を得ようと思った動機はなんだね?」
「え、ええ?! い、言わなくちゃダメですか?!」
「ええ?! そんなに言うの嫌?!」
逆にゾフィーの方が驚いている。
「隊長はどういった理由で?」
「いや、普通にお小遣い欲しかったし。まあ、周囲に友人がいたからね。遊びに誘われたら断ってばかりもつまらんだろう」
アルバイト、楽しかったな~。と言うゾフィーを見て、全員が肩透かしを食らったような表情をした。
「え、何? どうした?」
「別に~」
「なんでもないですぅ~」
「超つまんなーい」
「で、80君は? もうちょっと面白い動機?」
「そ、ソンナコトハナイデスヨ?」

あなたの為なら壊します38

80が連れてこられたのは、2回ぐらい見学にきたことがある、宇宙警備隊の本部ビルだった。
「え、君たちの言うバイト先ってここ?」
「「そうです」」
「有能な人材は、若くても即戦力です!」
「先輩は真面目そうだから、きっと戦力になると思います!」
「いや、ちょっと待って! 僕はまだ高学年になったばかっりなんだよ! 警備隊で即戦力になんてなれるわけないよ! 単位がいくつ足りないと思ってるの?! まだ光線技の応用授業が始まったばっかりなんだよ?!」
しかも周囲の視線が痛い。学生が年下の少女たちに引きずられて警備隊ビルの中を移動しているのだ。そろそろ質問されるかもしれない。
双子の少女たちは、周囲の視線などまるっと無視して、隊長室があるセキュリティエリア用のエレベーターの前に80を連れてきた。人影が少なるなってきたことに、80が少し怖くなる。
「ね、君たち何処に連れていくつもり?」
「仕事現場です」
「ちなみに現場では私達の方が先輩です」
二人は得意げに小さな胸を張った。
ビクビクしながらエレベーターにのると、二人はフロアボタンを隠しながら押す。
(ものすっごくマズイ場所だーーーー!!)
エレベーターの中には窓もなければ鏡もない。まだ未熟な80にはわからないが、たぶん監視カメラはある。浮遊感もないので、上に行っているのか下に行っているのかもわからない。
やがて音もなく扉が開くと、キルシュとペシェが先に降りた。そしてぐるぐると廊下を歩かされ、地味な扉がいくつか続くうちの一つの前で止まる。扉には室名も何も書かれていなかった。
「さ、着きましたよ」
「隊長~! アルバイト一名連れてきました~!」
「た、隊長~~~~~?!?!?!」

あなたの為なら壊します36

「ねー、隊長、隊長」
「ご相談があるんですけど」
少々小生意気ではあるが、キルシュとペシェは優秀だった。情報処理能力が物凄く高い。5窓6窓は当たり前で、検索をかけるのも上手だった。連邦議会の会議報告書まで盗み見てくる程である。更に双子だからなのか、互いに超能力を使わなくても見ているものが共有できるらしく、見てもいない画面を訂正しあってもいた。
二週間もすると、もう床に積みあがったプレートはなくなった。口調はこれから直させなければいけないが、仕事に余裕ができてきたのは良いことだ。おかげでゾフィーは伸ばしに伸ばしまくっていた会合や視察にでかける時間ができた。ディナ達は交代でそれに付添ったり、双子に効率的なデータ処理を教わったり、レピと一緒にお茶を飲んだり作法について勉強をしたりした。
「どうした?」
「ここってまだアルバイト募集中ですよね?」
「アルバイトどころか正社員が欲しいんだが」
「隊長、社員ではなく、隊員です」
ウルトラの父が隊長を務めていた時は、10人以上が秘書官を務めていたのだ。半分以下で回している今の方が凄い。
「あれ? ひょっとして今って凄い?」
「何がですか?」
「あ、ああ・・・・ちょっと・・・・。
それで? 誰か面接でも希望をしているのか?」
キルシュとペシェは、机ごとずずいっと移動してきて、ゾフィーの正面に並び、ついでにプレートを開いて仕事をしていた。ながら仕事できるって凄い。
「この間、上級生が引率をしてくれて、他の惑星で授業を受けてきたんですよ」
「ふんふん」
「私達が先生に授業を受けている間、上級生ってヒマな時間ができるじゃないですか」
「その時に、ずーっとアルバイトの求人情報を見ている先輩がいたんです!」
「これは即座に確保するべきですよ!」
「なるほど」
身を乗り出していたゾフィーは椅子に座りなおして少しそっくり返る。
「まだ決まってはいなさそうということだな?」
「「そうです」」
「では、すぐにその貴重な人材を確保してくるように!」
「「了解!!」」

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