もしも小話

アニメや特撮等、筆者の見たものの「もしも~」的な話を載せたりするブログです。無断転載禁止。

親指メビ20

「久しぶりだね、タロウ」
「ああ、やっとこっちに来たんだね。レオが遅いって心配していたよ」
「タロウ教官!」
メビウスは久しぶりに会ったタロウに飛び付きました。
「おっと! 元気の良い子だな。
君は?」
メビウスはタロウが自分を憶えていてくれないことに、ちょっとがっかりしましたが、仕方がありません。ユリアン王女もアストラもそうだったのですから。
「はい、僕はメビウスっていいます」
「メビウスか。良い名前だね。僕はタロウっていうんだ」
「タロウはね、花の妖精達の王子様なんだよ」
「王子様!」
確かにタロウはそんな感じがしました。ユリアンとは別に血縁でもなんでもないのですが、御両親が御両親なので、なんとなく王子様のようにステキだなと思ったことがあります。それがまさか本当だったとは。
「ここは花がたくさん咲いていて、僕たち妖精の暮らしやすい場所なんだ。
どの花にも、ちゃんとおしべとめしべがそろっているんだけど、僕だけおしべの花なんだよね」
アハハハ・・・・とタロウは笑って頭を掻きました。
メビウスが首を捻って隣の花を見ると、エースと夕子さんが仲良くおしゃべりをしていました。
「そうだ! 僕のお嫁さんになってくれませんか?」
「え、ええええっ?!」
「ああ、それはいいね。君はタロウと同じぐらいの大きさだし。
外見も似ているから、お似合いになるんじゃないのかな?」
「そ、そんな・・・・。ぼ、僕がタロウ教官、と・・・・け、けけけケッコン?」
思わすその姿を想像してしまい、メビウスは顔が赤くなりました。
「あ、あの、でも・・・・その・・・ぼ、僕、まだ全然、何もできない、落ちこぼれだし・・・・」
「おい、チビスケ」
いきなり空が陰って、少し低い声が天から降ってきました。
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親指メビ19

外に飛び出したアストラは、少ししゃがむとメビウスをおんぶしてくれました。
「す、すみません!」
「いいよ、これぐらい。君は羽みたいに軽いんだから」
そのまま背中に乗せたまま、アストラは南の方に向かって飛びました。
「ああ、久しぶりです!」
自力で飛んでいるわけではないのですが、風圧が全身に当たるのが心地よくて、メビウスは本当は危険なのですが、体をできるだけ起こして周囲を見渡しました。

アストラは森を越え、海を越え、万年雪におおわれた山々を越え、飛んでいきました。
「あれ? そういえば、ユリアン王女のところに戻らなきゃ・・・・」
「お姫様だったら普通は護衛がいると思うよ」
「でも、近くに80先生がいなかったです」
「誰かに呼び出されていたのかもね」
アストラはメビウスを落とさないように、軽く肩をすくめました。

こうして何日も飛んで、やっと暖かい国にたどりつきました。
そこではお日さまが明るくほがらかに輝いて、空はどこまでもすきとおって見えました。細い道のそばに森があって、木々からは色とりどりの果物がたわわに実り、下の草には可愛い花達が咲いています。花をつけない草もかぐわしい香りも放っていました。
「とっても素敵なところですね、アストラ師範代」
「そうだよ。ここが僕が生まれた国さ」
「え? L77星なんですか?」
やがてアストラは森の中心にある青い湖のところへやってきました。ほとりには青々とした木々が立っていて、湖に影を落としていました。そこに、朽ちた宮殿がありました。遠い昔に建てられて、今は壊れてしまった大きな大理石の柱は、未だに目がくらむほど真っ白です。
房のついたブドウの蔓が、辛うじて立っている宮殿の柱にからみついていました。その頂上にたくさんのツバメの巣がありました。その中の一つに、アストラはメビウスを連れていきました。
「これがぼくの家だよ」
「この枯葉の組み合わせはあったかそうですね」
すっかり防寒の素材に詳しくなったメビウスは、ツバメの巣に下りようとしましたが、アストラはそんなに近づいてくれません。
「でも、君に住んでもらうために作ったものじゃないから、あんまりくつろげないかな。
あそこにすてきな花がいっぱいあるだろう? あの中から一つ選んでくれたら、その上に下ろしてあげるよ。ぼくは君が幸せになるためなら、どんなことだっておしまないよ」
「僕はここで充分ですよ。太陽に近いし、あたたかいし」
「おーい、そこに居るのはアストラかーい?」
おーいおーい、と叫ぶ声が、下から聞こえてきました。何処かで聞いた声です。
「ああ、タロウ」
「タロウ教官?!」
アストラは嬉しそうに返事をすると、メビウスを背中に乗せたまま、倒れた大理石の柱の方に降りていきました。

親指メビ18

やがて、メビウスの世話の甲斐もあり、アストラツバメは元気になりました。春になるまでの間、メビウスは毎晩アストラと話しをしました。
「アストラ師範は空を飛べるんですか? 僕は飛べなくなってしまっているんですけど」
「大丈夫、もう怪我も治ったからね。
後は外が暖かくなれば、君を背中に乗せて飛べるよ」
「お願いします!」
でもメビウスは、一人残されるアプサラスが寂しくないか考えてしまいました。
「大丈夫じゃないかな? あのリフレクトってちょっとムカつく奴がいるだろうし。少なくとも、話相手には困らないだろうね」
「そうですね」

やがてあっという間に春がやってきて、お日さまが地面をぽかぽかさせました。雪解け水が土壁に浸みてきて、壁が弱くなってきました。
メビウスはアプサラスの事が心配になり、土壁の補強をアストラに相談すると、アプサラスの寝ている夜に、一緒に手伝ってくれました。
そして補強も終わると、アストラは、自分が寝ていた地下通路に再び戻ってきました。
「さて、レディ。ちょっとどいててね」
「はい」
アストラはメビウスを出入りの方に避難させると、軽く両足を開いて天井を見上げました。
「さあ、久々に太陽を拝ませてもらおうか!
イヤアアアアアアーーーー!!」
飛び上がったアストラのキックが天井を突き破り、そのまま地上へと飛び出します。
「やった!」
ぱらぱらと降ってくる土を被りながら、メビウスも久しぶりの太陽の光に、満面の笑みを浮かべました。
「さあ、レディ。一緒に南の森に行こう!」
アストラが手を伸ばして、メビウスを地上に引き上げてくれました。

テーマ:二次創作 - ジャンル:サブカル

親指メビ17

 翌日、メビウスは家事を手伝った後、こっそりと地下通路に降りました。お昼の支度をする前に、アストラの様子を見たかったのです。アプサラスは刺繍をしているので、メビウスがちょっと席をはずしていても気づきません。
地下通路に入る時、メビウスはカンテラを持って入りました。
「アストラ師範代、大丈夫ですか?」
暗い通路の中では、相変わらずカラータイマーが赤く点滅していますが、そのおかげで通路の中は少し明るくなっていました。
「良かった。あんまりエネルギーの消費をしていなくて」
メビウスはアストラの側にカンテラを置いて座りました。寒い地下通路の中では、僅かの光のカンテラでも暖かく感じます。
アストラのカラータイマーに手を乗せると、また少しエネルギーを送ります。
しばらくそうやっていると、アストラの目に光が灯りました。
「う、うー・・・・ん・・・・」
「アストラ師範代!」
ゆっくりと首を振りながら、アストラが意識を取り戻し始めました。
「大丈夫ですか? 怪我、見た目には見当たりませんけど、何処か痛いところはありますか?」
「ありがとう、可愛いレディ」
と、目を覚ましたアストラは言いました。
「僕はレディじゃありませんよ。宇宙警備隊に入るんですから!」
メビウスはちょこっとだけ頬をぷくっと膨らませました。
「エネルギーをくれてありがとう。もう力が漲ってきたよ。もう暖かい日差しの中で飛べるよ」
「ダメですよ。外は凄く寒いんです。吹雪が吹いていて、三か月ぐらいは閉じ込められてしまうって、アプサラスさんが言っていました。それに、ここは太陽の光も入ってきませんから、エネルギーが回復するまでに時間がかかります。
あの、ちょっとずつで申し訳ないんですけど、エネルギーが回復するまで、僕がお世話しますから」
「ありがとう、レディ」

メビウスはそれから夜にもまた、カンテラに足す油を持ってアストラのところに行きました。カンテラの灯りと布団のおかげか、カラータイマーの点滅は大分緩くなっていました。
「僕の翼の片方はトゲで傷ついているんだ」
「えっと、師範代には翼がないですし、トゲじゃなくて鎖ですよね?」
「だから、皆のように早く飛ぶことが出来なくなった。暖かい南の国へ旅立てないんだよ。それからついに地面に落ちて、それから後は憶えていないんだ。どうやって君が見つけてくれた場所に来てしまったかも」
どうしてアストラ師範代までおかしなことを言うんだろうな? とメビウスは首を傾げつつ、毎日精いっぱい世話をしました。
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親指メビ16

メビウスはその夜、ベッドからそっと降りると、毛布を二枚持ってそっと地下通路へのドアを開きました。
リフレクトがサングラスをかけていたので、通路は真っ暗なのですが、メビウスのカラータイマーが辺りを照らし出します。
「アストラ師範代、大丈夫ですか?」
何度か控え目に声をかけますが、アストラは一向に目を開きません。
メビウスはとりあえず、毛布を地面に敷いてアストラを寝かせると、その上にもう一枚の毛布をかけました。
「僕も寒いからあまりエネルギーは無いのですが・・・・」
メビウスは少ないながら、カラータイマーに手を当てると、アストラの光を失ったカラータイマーにエネルギーを与えました。
少しの照射ですが、アストラのカラータイマーが、徐々に赤く点滅しはじめました。
「やった・・・・!」
メビウスもカラータイマーが点滅し始めてしまいましたが、今はそれよりもアストラにエネルギーが移されたことの方が大事でした。
「あとはどうしたらいいかな? ここで火を起こすわけにはいかないし・・・・」
色々考えた結果、タロウから以前に「気付け」という単語を聞いていたことを思い出しました。
「確か、ミントの葉っぱが気付けに効くっていってたよね」
メビウスは一度通路を戻って台所に行くと、料理や保存用に使っているペパーミントの葉っぱを取ってきました。とても大きいので、何時もはちぎって使っているのですが、アストラの為にメビウスは保存してあった大きい葉っぱを丸ごと一枚持って行きました。このまま毛布の上にかけるのです。
本当はこんな地下通路に置いておくのは良くないことなのですが、通路に穴を開けても外は雪で余計に凍えてしまいます。
「明日、また来ますね」
メビウスはアストラの上にミントの掛け布を置くと、アプサラスに気付かれないように部屋に戻りました。

テーマ:二次創作 - ジャンル:サブカル

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