もしも小話

アニメや特撮等、筆者の見たものの「もしも~」的な話を載せたりするブログです。無断転載禁止。

クロスカウンター3

食事のあと、テーブルを囲んでナオが重々しく口を開いた。テーブルの上にはエメラナが淹れた紅茶が湯気をあげている。
「これから、ミラーナイト使用会議を行います」
「ナオ、そのように怒らなくても・・・・姫様にお仕えするのは私の使命なのだし」
「でも、そんなに能力とか使ってたら疲れるだろ?」
「問題ない、大丈夫だ」
「えーと、エメラナの自立だっけ?」
ランは何時の間にやら出したのか、ホワイトボードに「掃除」「洗濯」「料理」と書き込む。
「掃除は小型ロボットがやるからいいだろ」
ランとナオもありがたく使わせてもらっている。狭い船内では、あまり物を増やさない。手で使う掃除道具はエンジンルームの近くに小さな箒と塵取りがあるぐらいだ。
『洗濯は城に出す。異論は認めない』
「うーん・・・・確かに、俺達でも洗えないけど・・・・」
ひらひらのドレスを見て、流石にナオは首を縦に振った。
「あと、料理は・・・・」
『姫様の手に傷がついたらどうするつもりだ!』
「んー、でも包丁使わなくてもミキサーとかフードプロセッサーとか、ピーラーとか、道具は色々あるだろ」
「粉を捏ねるところから始めたっていいじゃん! パン焼くとかさ」
「まあ、素敵」
先日、ランとナオが作った菓子パンを思い出し、エメラナは頬を緩めた。
「ええ。私、パン作り、頑張ります!」
『ひ、姫様!』
「ジャンバード、火加減をよろしくね。出来上がったらミラーナイトやゼロにも食べてもらいたいわ」
「姫様・・・・! なんと光栄な・・・・」
『お任せてください!』
感極まる二人の家来を置いて、ナオは冷静に話の続きに戻った。
「それと、買い物ももっと計画的にしなくちゃね」
「パシリって言いだした原因はそれか。まあ、確かになんでもかんでも頼むのは良くないな。
後は、ジャンバードが簡単に寄り道してくれるかだが」
「私からジャンバードに頼んでみますね」
エメラナは微笑みながら、紅茶のお代わりを注いだ。
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クロスカウンター2

「兄貴!」
ナオが咎めるように一歩詰め寄る。
「な、なんだ?! どうした?!」
「もー、兄貴もミラーナイトをパシリみたいに使わないの!」
「え? あ、ああ・・・・ごめん。
じゃあ、今日はカレーじゃなくてなんか炒め物にするな」
「え?!」
なんだかわからないまま謝ったランだが、次のセリフに驚いたのはゼロだった。
「今日はカレーじゃないのか?!」
ジャンバードに張り付いて顔をくっつけてくる。画面いっぱいに広がったゼロの巨大な顔に、エメラナ達はびっくりした。なんかジュワジュワ言っているが、なんとなく言いたいことはわかる。ゼロはカレーが好きなのだ。
「いやー、ジャガイモ残ってるかと思ったらなかったからさ。ミラーナイトに買ってきてもらおうと思ったけど、なんかダメっぽいし」
ゼロが「行って来いよ!」と腕を振ってジェスチャーすると、ジャンバードの中でミラーナイトは困ったように肩をすくめた。
「私は別に構わないが・・・・」
「ダメ! 我慢するの!」
ナオが強硬な姿勢を示した。
「兄貴、便利なことに慣れちゃダメだってばあちゃんも言ってただろ? 俺達は開拓民なんだぜ!」
「そうだな。ま、料理は次の惑星で仕入れるまで在り合わせでなんとかするから別にいいけど」
その他日用品もランとナオに関しては問題はない。
「そうですね。私も、何時もミラーナイトに頼んでいたから、つい・・・・」
『姫様は当然ではありませんか!』
エメラナに至っては日用品も更には着替えも、全部決められた箱に収められていて、それを毎日ミラーナイトが鏡で送ったり送られたりしているのだった。まさかドレスをジャンバードの中の全自動洗濯機で洗うわけにもいかない。印章の入った手紙やらなにやらも、全部王宮で管理しているのだ。
「でも、私だってこうして旅をしているのです。自分のことは自分でやらなくては」
『ナオ、姫様のお着換えなどは、専従の者が用意しているのだ。宅配にしても、途中で盗難にあったらどうする。小物一つで姫様の名を騙る者が出てくるかもしれないのだぞ』
「そりゃ、そうだけど・・・・」
「ジャンバード、私、ナオの言いたいこと、少しだけわかります。このままでは私は、自分のことは何もできない人間になってしまいます。
決めました。私、自立することにします。お掃除もお洗濯も、私がやってみせます!」
『姫様!』
「姫様、おやめください!」
悲鳴をあげるジャンバードとミラーナイトのを放って、ゼロはランにテレパシーで話しかけた。
「カレーは?」
「当分なし」

クロスカウンター1

ジャンバードの自室の中、エメラナは一心に筆を進めていた。あちらの王族、こちらの大統領。宇宙警備隊のことを知ってもらうため、エスメラルダ王室の名にかけて親書を一通一通丁寧にしたためる。直接的な戦力にはなりえないが、自分だけにできる仕事があるということは、エメラナの自信になっていた。
手に持つ万年筆もインクも紙も、全てがエメラナの為に作られたものだ。だから。
「あ、あら? インクがもうなくなってしまったわ・・・・」
止む無く書きものを切り上げると、ブリッジに向かった。ランはおらず、ナオが一人でドラゴノガンを分解・清掃をしていた。
「あれ? 仕事もう御終い?」
「ええ、インクがなくなってしまったのです」
エメラナはブリッジの窓から、外でゼロ達と飛んでいるミラーナイトを見た。
「ミラーナイト」
「はい、姫様」
「申し訳ないのですが、私の部屋に行って、インクを取ってきてもらえませんか?」
「かしこまりました」
「ええ?!」
虚空に作りだした鏡の中に、するりと入るミラーナイトを見て、ナオが立ちあがって声をあげた。
「ど、どうしたのですか、ナオ?」
「インクだったらその辺で買ってくればいいじゃん! 幾らミラーナイトが鏡で移動できるからって、ここからエスメラルダにまで行くとか変だよ!」
「そう、でしょうか・・・・?」
『ナオ、姫様が使われている道具は、どれも姫様の為に作られた特別な物ばかりだ。それを使うことで、姫様がいらっしゃることを証明されているのと同様の効果をもたらす。その辺で売られているような物では偽造されてしまうからな』
「でも、筆跡とかあるじゃん?
あ、銀河宅配サービスで、次の惑星宛てに送ってもらったら?」
『私よりも飛ぶのが遅い船に運ばせるのか?』
「あ、あの・・・・」
二人のやり取りにエメラナがおろおろとうろたえる。
そうこうしているうちに、ミラーナイトが戻ってきた。元々エメラナに必要な物は全て管理している侍女達がいて、彼女らに言えば済む事なのだ。
「姫様、戻って参りました」
「ありがとう、ミラーナイト。
ねえ、私が貴方にこうしてインクや紙を持ってきてもらうのは、おかしなことかしら?」
「そんなことはありません! むしろ姫様に信頼されている証です!」
『わかったか、ナオ?』
いかにもなドヤ声に、ナオは声は出さずに唇を尖らせた。
そこへエプロンをしたランが入ってきた。
「悪い、さっき言ってたメニュー、変更・・・・
あ、ミラーナイト! 丁度良かった! 近くの惑星でジャガイモ買ってきてくれ!!」
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Secret of Rose 33

ゼロ達は、カヤキスの葬儀が済むまで、ローザ=ライマンにいた。
王妃と僅かな家臣が参列しただけの、簡素で寂しい葬儀だった。その王妃でさえ、黙祷の僅かな時間の後に席を辞した。
「お気の毒に・・・・もっとカヤキス王子の元にいたかったでしょうに・・・・」
「なんで王子の父さんは来なかったの?」
「王子は謀反を起こした罪人として扱われているのです。
あれだけの数の王族たちの身に危険を感じさせてしまったのですから、当然と言えば当然かもしれません」
「それに・・・・」
ラン達はヘルシングの事は話さなかった。これでベリアルと繋がっていたのでは、何も知らない王妃が可哀想過ぎるだろう。
(なあ、いくらなんでも、死んじまった子供の葬式ぐらい出てやれよ。なんでだよ・・・・)
ランの内側でゼロが呟いた。
「ゼロ・・・・立場があるっていうのは、辛いモンなんだよ」
「ゼロが何か?」
「ん、ああ・・・・カヤキスの事、心配してる」
「優しいのですね、ゼロは。
ですが、陛下も王妃様もお辛い心情を隠して、王子の処遇を決められたのです。
これから、国の立場も苦しくなるでしょうし、それに影響されて民達の生活や心情に悪い影響が出ることもあるかもしれません。
夜に涙を流されると思うと、とても心苦しく思います」
エメラナは地面を見つめた。王族として葬られることのなかったカヤキスだが、僻地の墓地にも美しく花が咲き乱れている。
「早くあのヘルシングって奴をやっつけようよ。
あいつ、ゼロ達のデータをカヤキスから受け取ってるんだ。それに、ベ・・・・」
ランは慌ててナオの口を塞いだ。
「そうだな。もう俺達がここに居たって、王妃様は辛いだけだろう」
「ええ。
他にも、こういった悩みを抱える方が罪を犯してしまうかもしれません。
その前に、防げることができるよう、働きかけなければ」
以前とは別人のように強くなったエメラナの言葉に、ランとナオは頷いた。


       終わり
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Secret of Rose 32

ジャンボットの目の前で、蔦や根っこがボロボロと自壊していく。
『倒したようだな』
「ジャンボット、カヤキス王子はどうなったのです?」
『わかりません。ジャンナインに連絡を取ります』
ジャンボットはバトルアックスを納めると、ジャンナインに通信を送った。
『ジャンナイン、そちらの状況はどうなっている?』
『戦闘は終了した。ユウキセイメイタイの、生命反応の停止を確認』
『生命反応の停止?! まさか・・・・』
「ジャンボット?」
エメラナの声に、ジャンボットは落ち着かない様子で振り返る。
『はい』
「ゼロ達は無事ですね?」
『は、はい・・・・』
「良かった・・・・。
タチアナ姫、ウォードはもう大丈夫です」
「流石ね、ベリアルを倒した宇宙警備隊は」
タチアナは肩をすくめると、勝気に笑ってみせた。そして後方にいる王族達に向かって声を張り上げる。
「皆様方! もう危険は去りましてよ!」
「おお・・・・」
「助かった・・・・」
安堵の声が次々と上がるが、それに続くのは非難の視線だった。
「皆様方、我が国の王子が大変に申し訳ないことをしました」
ローザ=ライマン王と妃は会場にいる王侯貴族達一人一人に頭を下げた。
「おいたわしい・・・・カヤキス王子はどうしてこんなことを・・・・・」
「やっぱりディアナ姫の方に王位継承権が譲られることを悩んでいたのかしらね。こんなことをしたって、何にもならないのに・・・・」
タチアナがエメラナを励ますように肩に手を置く。
やがてミラーナイト、グレンファイヤー、ジャンナインが戻ってきた。ジャンナインの掌には、ランとナオがいる。
「ラン、ナオ! 無事で何よりです!
ミラーナイト達も・・・・」
ジャンナインによって地面に下ろされたランの腕に抱えられた人影に、エメラナの声が止まる。
「カヤキス王子・・・・。すぐに病室へ・・・・!」
「いいや、行くのは墓地だよ」
「カヤキス! カヤキス!!」
女の叫び声がした。声をあげた人物はランの腕の中に縋る。
「ああ・・・・なんて可哀想な子・・・・」
泣き崩れた王妃の姿に、誰もが声を失った。

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